【海外情報】スマートガラスにまつわる5つの誤解(後編)

著:Manoj Phatak
ArtRatio社及びSmart Glass World 出資者兼CEO

誤解3:スマートグラスは単なるプレキシガラスであるという誤解
Plexiglas(プレキシガラス)はRohm & Haas社の商標で、より正確にはポリメタクリル酸メチル(PMAA; polymethyl methacrylate)という名称のアクリル樹脂で、通常はシート状に製造される透明な熱可塑性樹脂です。安定な物性を有し、単一の素材から構成されています。一方、スマートグラスは、プラスチック、導電材料、コーティング、スイッチングフィルムなどの複数の層からなる複合体であり、これが動的な光フィルターの機能を提供します。無論、どのスマートグラスの製品を指しているのかによって、正確なスマートガラスの構成は異なります。

一例として、浮遊粒子デバイス技術(Research Frontiers社のSPD-Smart Glass®)では、透明導電層として酸化インジウムスズ(ITO; Indium Tin Oxide)を使用しており、PET、EVA、PVBの透明ラミネート層で挟まれています。

一方、エレクトロクロミックガラスは、酸化タングステン、ポリアニリン、ITOなどの材料とガラス基板を積層したもので、構造が大きく異なっています。エレクトロクロミックガラスは、電解質層とエレクトロクロミック層の間でイオンを伝達する電池のようなものです。

下図はその一例です。ただし、各メーカーは独自の積層設計を行っている点にご注意ください。

誤解4:スマートグラスはオン・オフしかできないという誤解
いくつかのスマートガラスは、調光モジュールによって調光することができ、不透明なものから半透明や透明まで、どのようなレベルでも制御やデジタル接続が可能です。

アクティブ型スマートグラスの場合、駆動信号にはアナログの直流電圧、電流、交流電圧、あるいはKNX(ホーム・ビルオートメーションの国際標準プロトコル)などのビルディングオートメーション技術からのデジタルコマンドを使用することができます。

起動のトリガーは多岐にわたります。

– ビル、自動車、家庭用機器に組み込まれたセンサー(例:温度、光、近接)。
– ビルオートメーションシステム(例:KNX)により、居住者が設定もしくは自動で行う。
– ウェブベースのデータフィード(例:ソーシャルメディアのチャットを監視してテロの脅威を予測する、スマートガラスの建物のファサードを透明にして視界を確保し避難を支援するなど)。
– 音声制御システム(Alexa、Google Home、AppleのSiriなどに代表されるもの)。

スマートグラスの駆動方法とその結果得られるメリットは非常に多様であり、素材、技術、応用分野によって異なります。

誤解5:スマートグラスは非常に高価であるという誤解
産業界では、スマートガラスをソーラーパネルと同様に捉える必要があります。つまり、資本投資であり、その後の運用利益とコスト削減により、定量的な投資回収期間を得ることができます。

ソーラーパネル産業における一般的な投資回収期間は6年から10年と言われます。これは、その投資が利益を生むまでにかかる期間です。このように、スマートガラスについて語るとき、単に建築や設置のコストだけでなく、総所有コスト(TCO; Total Cost of Ownership)を検討しなければなりません。TCOの数値には、この投資の直接的な結果として発生する運用コスト(及びコスト削減)も含まれます。

スマートガラスシステムの定量化可能なメリットは以下のとおりです。

– 建物や車両の空調コストの削減 – 太陽光の赤外線(熱)をフィルターすることによる効果です。
– ファッション製品、美術品、その他光に敏感な素材の色あせや劣化を低減し、その結果、市場価値を保護することができます。
– 照度の調整ができるため、従業員や顧客の生産性、快適さ、定着率が向上します。
– 銀行、医療施設、小売店の店頭で機密データを保護するためのスイッチ式プライバシースクリーンなどで、セキュリティ侵害の減少、顧客満足度の向上、信用維持コスト削減が期待できます。

これらは定量化が難しい場合もあり、プロジェクトのスタート時には判然としないかもしれませんが、定量評価値として存在することは明らかにしておくべきでしょう。

結論
スマートガラス技術については、まだその普及が進んでいないため、多くの誤解があることは理解できます。ただし、この技術は必ずしも新しいものというわけではなく、建設、交通、医療など多くの分野で応用され、成功を収めています。

しかし、スマートガラスについて知らず知らずのうちに誤解してしまっているお客様から問い合わせを受けることが多くありますので、本稿がその解消の一助になればと願っています。

二酸化炭素排出量の削減や環境の持続可能性が喫緊の課題であることを考えると、私たちの世界はスマートガラス技術の急速な普及に委ねられていると言えるかも知れません。


※本記事は、glassonline.comを運営するA151 SRL社に特別な許諾を得て掲載しています
※情報出展元:Technology International September/October Year 33 No.5/2022 76 – 79 Page 掲載「Five common misconceptions about SMART GLASS」


本記事に関する問い合わせ先
株式会社TGM 営業部 設備グループ
TEL: 03-6261-1260 MAIL: general@tgm-japan.com

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