
リーン生産方式の中核となる考え方は、お客様に対する付加価値を高め、全ての不要な作業や「ムダ」を減らし、生産を最適化する事にあります。トヨタ自動車から生まれたこの新しいリーン生産方式により、様々な業界の多くの企業が競争力と収益性を大幅に向上させており、ガラス事業も例外ではありません。
リーン生産方式で定義されているように、「ムダ」とは、お客様に対する価値を高めない時間、材料、エネルギー、又は労働力のことですが、必要なものと不必要なものがあります。法律、規格、又はお客様から要求される検査は必要な「ムダ」であり、完全に取り除くことはできませんが、最小限まで減らすべきです。不要な「ムダ」は、完全に取り除くことが目標です。
リーン生産方式では、もともと七つのタイプの「ムダ」が定義されています。ここでは、ガラス加工におけるいくつかの典型的な例を見てみましょう。特に、風冷強化と後工程に重点を置き、最新の検査技術を使用することで、どのように「ムダ」を省くことができるかを考えてみます。
不良品
不良品の生産は、時間、費用、資源の損失を意味し、不良品が現場に流出すると顧客満足度も大きく損ないます。典型的な原因は、品質管理の不備や欠落、メンテナンス不足、未熟なオペレーター、信頼性の低い加工設備などです。
品質検査装置は、全ての製品を自動的に検査し、不良品のガラスが後工程に流出し、生産能力、材料、エネルギー、労働力を浪費する前に、識別して工程から取り除くのに役立ちます。

単なる検査は価値を高めるものではないため、「ムダ」とも言えますが、業界や工場の規格、お客様の要求に応えるためには必要な場合が多いのです。幸いなことに、オンライン検査システムで歪みやアニストロフィー* などの検査を行うことで、検査にかかる時間や労力を容易に最小化することができます。
* 偏光した光源に当てたり、偏光サングラスで見たりしたときに、暗部と明部のゴースト状(虹色)のパターンとして現れる光学現象の一種。
包括的なオンライン検査システムを適切に使用すれば、工程改善のための貴重な情報を得ることができ、それによってお客様にも付加価値を提供することができます。最新の検査システムは工程の傾向を認識し、不合格の基準値を超える前にレシピを修正するよう提案し、安定した品質を維持できるようにサポートします。

過剰な生産と在庫
ガラス加工メーカーは、合わせガラスや複層ガラスの製造などの後工程で発生する不良品や破損を補うために、ガラスを過剰に加工する傾向があります。例えば、波打ったガラスは仮圧着やオートクレーブ処理の際に簡単に不良となります。この問題は、中間膜を厚くしたり、最終検査で数パーセントの廃棄を許容する方針を立てる事で対処されているケースが多く見られます。また、客観的な合否基準がないと、特に建設現場での遅延やクレームに対する制裁が大きい場合、不必要な予備在庫を抱えることにもなりかねません。

過剰・不必要な作業・処理
強化合わせガラスの平坦度の悪さを補うために、合わせ工程で中間膜を厚くすると、材料費だけでなく、人件費、工程時間、エネルギーなどの「ムダ」なコストがかかります。また、オートクレーブの際にエッジの隅々まで圧着したいがために、エッジを押さえるクランプの使用も「ムダ」な労力の一例です。このような「ムダ」を省く唯一の確実な方法は、強化炉の平坦度レベルを最適化し、検査装置で安定した品質を確保することです。
モックアップとは、品質の合否を判断するための、試験モデルのようなものです。ガラスの物理的な品質比較には時間がかかり、品質に対する解釈や意見の相違の可能性があるため、お客様にとっては余計な手間と出費にしかなりません。例えば、アニストロフィーの検証はしばしばモックアップを使用して行われます。新たに発行されたASTM規格* は、客観的でシステマチックなオンライン検査装置が更に普及する可能性を高めており、これが進むと運用コストの増加やモックアップ作成が不要となります。この規格を生産現場で活用するには、互換性のある性能を持つ検査装置が必要です。
* ASTMは世界最大級の民間規格制定機関(非営利団体)で、約130分野(プラスチック、金属、塗料、繊維、石油、建設、エネルギー、環境、消費財、医療サービス・機器、コンピュータシステム、電子機器など)の標準試験方法、仕様、作業方法、ガイド、分類、用語集を作成し、出版しています。
ロスタイムと遅延
ロスタイムには、人的要因、材料要因、加工設備要因(ダウンタイム、ジョブチェンジ、故障)が含まれることが多く、風冷強化での典型的な例は以下のものがあります:
- ラックで処理を待つ在庫
- レシピや風冷強化パラメーターの検索と調整にかかる時間のロス
- 手作業による検査・試験結果の待ち時間
- クエンチングや加熱工程での破損
欠陥は後工程で常に問題を引き起こします。端面処理、切り欠き、穴あけ等の欠陥は、炉内でのガラス破損に繋がり、片付けや清掃のために炉を冷却し、その後再加熱しなければならないため、大きなダウンタイムの原因となります。端面の欠け、ひび割れ、寸法変化は人間の目では簡単に見落とされてしまいますが、前処理の直後に適切な品質の検査装置を使用すれば確実に見つけることができます。
「ムダ」な動きと移動
特にガラスのような壊れやすい素材の場合、不必要な輸送や人の移動は付加価値を生まず、かえって破損のリスクを高めます。にもかかわらず、ガラス加工工場の内情を見ると、多くのラックに仕掛品のガラスが無作為に溢れています。
幸いなことに、ガラス業界では、ラックで長期間保管される仕掛品を減らすために、搬送、ストレージ、ソーティングシステムなどの自動設備の導入が進んでいます。自動化されたガラス処理には、検査装置の使用が必須です。例えば、ローディングテーブルに入るガラスの種類、厚さ、サイズを検査装置で確認し、ローディング毎に炉のパラメーターを自動調整することで、加工に要する時間を短縮することができます。

自動化されたガラス加工には、生産の全てをカバーする、時間に正確で、速く、信頼できるオンライン測定装置が必要です。時間がかかり、信頼性に欠けるにもかかわらず、マニュアルによる検査が必要な場合もあります。例えば、全体の反りを垂直に測定する必要がある場合、最新の検査装置は、過剰な反りが発生しやすいガラスを認識するため、ライン外での不必要なマニュアル検査の必要性を減らすことができます。

リーン生産方式に後から追加された8つ目の「ムダ」は、会社に存在する人材やリソースを活用するためのマネジメントの能力に関連しています。例えば欧州でも、熟練したオペレーターの不足が原因で、生産現場で問題が発生することは珍しくありません。企業は最も要求の厳しい製品を日勤で製造させ、その一方で、大半の製品は夕方や夜のシフトで製造させています。問題となるのは、生産品の殆どが、平坦度やアニストロフィーに関する厳しい許容基準を持つ、要求の厳しいガラスやコーティングを含む場合です。熟練した強化炉のオペレーターがいないと、現場で欠陥が発生するリスクが高くなります。適切な検査装置は、経験の少ないオペレーターをサポートし、歩留まりを向上させることができます。
リーン生産方式は、ガラスメーカーにとって非常に多くのメリットがあり、活用しない手はありません。これは、多くの選択肢と対策を伴う継続的なプロセスです。最新の検査装置技術の導入は不可欠であり、工程や品質の改善における最も簡単なステップです。

著者:Juha KARISOLA氏は強化ガラス、曲げガラス、合わせガラス加工の分野で25年の経験を持ち、現在は貿易とコンサルティングの会社を経営しています。
From: “Scanners – Indispensable Tools for Lean Glass Processing” written by Juha KARISOLA
株式会社TGMでは、年々高まるガラスの加工品質に対する要求を受け、強化ガラスの歪みおよび応力バランス測定のためのソリューションをご提案しています。また、ガラス表面の欠点検出のソリューションや、高い精度で測定・検出するために必要となる高性能な洗浄乾燥機もご提案しています。ぜひお気軽にご相談ください。
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