【ガラス設備】大型高級ガラスユニットの検査におけるパラドックス

Global Glass Specialists社のガラス加工シニアエキスパート、Mika Eronen氏

パラドックス:正しいと思われる前提と妥当な論理から、一見すると受け入れがたい矛盾した結論が導き出される状態

少し前、ある第三者品質検査に立ち会っていた際、4.8×2.6mの大型複層ガラスユニット(IGU)の前に立っていました。その数週間後、今度は長さ5メートルを超える複層ガラスユニットの製造工程を監督する機会があり、建築プロジェクトで需要が高まりつつある巨大かつ高級な複層ガラスユニットについて、現在の品質検査手法や関連する規格・規制のあり方について考えさせられました。

屋内での目視による欠点検査という課題を考慮すると、こうした大型複層ガラスユニットの目視検査の実現可能性は、単に疑問が残るというだけでなく、手法としてますます説得力を欠くものとなっています。問題は単に人手や労力だけではありません。再現性、検査のしやすさ、そして検査の妥当性も問われます。検査方法が、複層ガラスユニットごとに同じ検査距離、角度、照明条件、判断基準で再現できないのであれば、それはもはや、高級建築用ガラスユニットに対する管理手法として不十分と言わざる得ません。ここにパラドックスがあります。複層ガラスユニットはかつてないほど大型化、複雑化、そして重要性を増しているにもかかわらず、依然として多くの場合、その良否判定は主に目視検査に頼っているのです。

また、複層ガラスユニットは、その定義上、スペーサーによって仕切られ、周囲が密閉された少なくとも2枚の板ガラスからなる気密の高い構造体であるため、中空層に面する表面に欠点があったとしても、複層ガラス自体を解体しない限りその箇所に触れることはできません。同様に、合わせガラスの場合も、板ガラスと中間膜が恒久的に接着されているため、内部の面に触れることはできません。

規格が実際に検証する内容
現在のEN規格の枠組みは、実際のファサードの視認状況をすべて再現することではなく、再現可能な受入基準を確立することを目的としております。EN 1279-1:2018は複層ガラスユニットの光学的および視覚的品質を規定しており、一般的に適用されるEN準拠の検査条件では、直射日光や人工照明のない拡散した自然光の下で、ガラス表面に対して可能な限り垂直な視線方向から、少なくとも3 mの距離を置いて、反射光ではなく透過光によって複層ガラスユニットを検査します。外部(屋外側)からの検査においては、実際の設置状況や通常の視認距離が考慮されますが、それでも最低3 mの距離が確保されます。合否判定は、これらの規定された条件およびゾーン(領域)ごとの基準に基づいて行われます。可視領域もゾーンに分割されており、許容される欠点については、エッジ(端部)領域と主要な視認領域とで異なる基準が適用されます。
また、広く採用・認知されている「アダマール(Hadamar)」検査基準も存在しますが、多くの点でより厳格な方法であり、様々な考慮事項が含まれています。

アダマール検査基準(Hadamar inspection criterion):建築用ガラス(特に窓やルーフライトなど)の外観品質や表面の欠点(傷、気泡、汚れなど)を評価するための厳格な欧州の視覚検査基準でドイツのHadamarにある平板ガラス協会・研究所(Institute of Glazing Hadamarなど)のガイドラインに由来しています。
ガラス業界で広く使われている標準的なGGF(Glass & Glazing Federation)基準よりもはるかに判定が厳しいことで知られています。

品質管理システムの観点からは、これは理にかなっています。これにより、加工担当者と検査担当者に共通の基準が提供されます。しかし、実際の環境下にある完成した建物の視覚的な実態を再現するものではありません。例えば、水面からの反射、夕暮れ時の低い太陽光、斜めからの視線、暗い森や明るい湖畔を背景とした状況、あるいはごく局所的な条件によって、目にはかすかにしか見えない欠点が突然はっきりと見えるようになるような状況などは再現されていません。さらに、規制当局が、例えば異方性、結露、干渉などの可能性に対する評価基準を定義することもできません。

こうした「標準化された許容基準」と「実際の認識」との違いこそが、検査のパラドックスの核心です。

熱処理がもたらす複雑さ
ここで、このパラドックス(逆説的な状況)はさらに深まります。ガラスの熱処理(強化処理や倍強度処理)は、その工程に固有のさまざまな歪み現象を伴います。EN 12150では、全体的な反り、エッジリフト、ローラーウェーブなどの歪み現象について言及されています。また、業界の関連指針やこれまでの経験から、強化や倍強度処理によって、双安定な反り、白濁(ヘイズ)、異方性、ローラー痕、ローラーによるピッチング(小さな凹み)などが生じる可能性もあることが分かっています。

実務経験から言えば、例えば4メートルを超えるような大型板ガラスについて、EN 12150に規定された方法で全体的な反り測定を行うことには、実用的な価値が極めて限定的であると言えるでしょう。さらに懸念されるのは、応力耐久性に関する破壊試験が、1100×360 mmの試験片を用いて行われているという点です。破砕状態に影響を及ぼす強化プロセスの諸条件を考慮すると、現在の試験片ベースの試験手法は、これよりはるかに大きな実際の製品ガラスに適用する場合、明確な乖離が生じます。一部のメーカーは、より大きなガラスを用いて破砕試験を行い、安定した応力分布を確保するための特定の試験を実施していますが、それでもなお、この規格ままでは、損傷や破損につながるリスクが残されています。

それでも、建築関連のクレーム事例はしばしば複数の要因が複合的に絡み合っているため、これらの物理的特性は非常に重要となります。ある製品は、透過光における目に見えるスポット欠点(気泡や異物)に関しては許容範囲内であっても、ローラーウェーブやエッジリフトに起因する反射像の歪みが生じている場合があります。また、Low-Eコーティング自体が特定の照明条件下でヘイズ(曇り)を示すことがあるため、コーティングされたガラスは視覚的な変動要因をさらに加える可能性があります。合わせガラス構造では界面が追加され、ガラス枚数や中間膜の数が増えるほど、目に見える欠点が発生する可能性が高まります。これは、各層が欠点や光学的な影響をもたらす可能性をさらに高めるためです。一方で、合わせ加工によって、前処理、取り扱い、または熱処理に関連する欠点が隠れてしまう場合もあります。

ファサードの視認性が結果を変える場合
業界での経験から、視認性はガラス自体の品質だけでなく、建築現場の環境条件にも左右されることが明らかになっています。異方性の視認性は、設置環境、ガラスの品質、ガラスの種類、およびガラスの構成に依存し、わずかな異方性であっても、不利な条件下では目立つようになることは、業界ではよく知られています。実際には、これは、管理された工場での検査では問題ないように見えたガラスであっても、特定の角度から空の特定の領域がファサードに映り込むような状況下では、使用時に視覚的な違和感が生じる可能性があります。

こうした現状は異方性に限ったことではありません。熱処理によって、ヘイズ、虹彩現象、ローラーピッティング、ローラー傷、その他の光学的な現象が生じることがあります。これらは、ある角度から見た場合や、照明や周囲の条件が変化した際に、より目立つようになる可能性があります。つまり、クレームの多くは、ガラスが寸法や安全性の要件を満たしていないことにあるわけではありません。むしろ、EN規格の標準的な検査条件では効果的に再現するようには設計されていなかった光学現象が、実際の建物において最終的に露呈したことにあるのです。

サイズが大きくなるにつれて目視検査が困難になる理由
ガラスが大型化すると、目視検査に伴う課題は単なる人間の限界にとどまらず、検査手法そのものに関わる問題へと変化します。非常に大きなガラスの場合、一定の角度で検査することが難しくなり、屋内環境で均一に照明を当てることも困難になり、
全体を一つの視界の中で一貫性を持って判断すること、そして個々の製品間で客観的に比較することがいずれも困難になります。さらに、構造が複雑な構成(アセンブリ)である場合には、問題はさらに深刻化します。EN規格に基づく品質ガイドラインでは、許容欠点数を構成のガラスの枚数に応じて明確に段階分けされています。これは、複数の構成要素からなる複層ガラスユニットが、単純な2枚構成のガラスと視覚的に同等ではないことを示唆しています。

目視検査には依然として価値はあります。明らかな取り扱いによる損傷、著しい汚れ、エッジの損傷の検出や、最終的な人間による確認には有効です。しかし、高品質な大型ガラスの場合、微細な欠点や、コントラストが低く、製造工程に起因する微妙な光学現象を検出する主要な検査方法としては不十分です。その場合、検査結果が「誰が」「どこから」「どのような照明の下で」「どのくらいの時間」検査したかによって大きく左右されてしまうからです。たった1つの欠点を見逃しただけで、極めて多額のコストを伴う後工程への影響を招きかねない状況において、これは信頼性が不十分と言わざるを得ません。

最新のスキャナー技術
ガラススキャナー技術は、もはや単なる研究テーマではありません。強化炉の直後に設置されるオンラインスキャナーシステムは、長年にわたり産業現場で利用されてきましたが、その性能は現在新たな段階に達しており、さらなる進化を続けています。
これらのシステムは、合せガラス加工前、複層ガラスの組み立て工程前後、そして出荷前といった適切な段階で、品質管理のあり方を変革しています。LITESENTRY社のOsprey®25などのシステムは、熱処理ガラスを1枚ずつリアルタイムで検査するように設計されており、目視検査では再現できない一貫性をもって品質データを測定、記録します。こうしたシステムの真価は、施工後のファサードをよりよく検査できることにあるのではなく、欠点のあるガラス1枚がはるかに高価な最終製品の一部となる前に、加工会社が重要な品質基準を特定、測定、記録できるようにすることにあります。

熱処理された建築用ガラスにとって、これは極めて重要な変化です。現在のスキャナー技術により、表面の形状を驚くほど詳細かつ高精度に記録することが可能になりました。全体的な反り、ローラーウェーブ、エッジキンク(ガラス端部の折れ曲がり)やエッジリフトに起因する歪みといった指標を測定することで、光学的な歪みをミリディオプター単位で定量化することが可能になります。これにより、主観的な目視判断だけに頼る必要がなくなります。同時に、の異方性やホワイトヘイズ(白濁)についても、ガラスごとにオンラインでの測定が可能になりました。強化炉のオペレーターは、組み立て工程や、最悪の場合は施工現場で問題が発覚するのを防ぎ、製造中に即座に対応できるようになります。さらに、非破壊的光学応力測定法も進歩しています。周知の通り、強化ガラスの圧縮レベルは、破損時の破損状態と直接な相関関係にあります。規制基準のギャップに対するもう一つの解決策も存在します。現在では、ガラス板ごとの品質データを記録できるようになり、その精度や網羅性は、人手による検査では到底及ばないレベルに達しています。

この技術開発の重要性は、技術的な側面だけでなく、実用的な側面にもあります。複層ガラスや合わせガラスにおいて、構成するガラス1枚に欠点がある場合、それは単なる局所的な問題にとどまりません。それにより、製品全体の不適合判定や交換を余儀なくされる可能性があります。したがって、大型の高級ガラス製品においては、自動スキャナー検査を導入することで、品質管理を強化します。具体的には、強化工程でのリアルタイム検査に加え、強化前の段階(上流工程)でも検査を行います。これにより、コストや廃棄物、プロジェクトのリスクが増大する前に、製造業者がプロセスを修正できる適切な段階で対応が可能になります。プロジェクトによっては、納品時の不具合、交換対応、あるいは現場での是正措置にかかる費用が、そのトラブルを未然に防げたはずのスキャナー導入費用を容易に上回ってしまうこともあります。

考察 – どのような仕様がより適切な基準となり得るか
現在の建築用ガラスの動向や既存の検査技術を考慮すると、真に問われているのは、業界の現状を反映するために規制基準を改定すべきかどうかという点です。より大型のガラスや複雑なガラス製品に対して異なる検査基準や方法を定め、外観上の詳細だけでなく安全面についても、より明確な検査基準を設けるべきではないでしょう。そうすることで、より大型化、複雑化し、かつ外観上の要求が厳しいプロジェクトの実情に即した検査方法や基準が可能となるでしょう。

スキャナーを用いた検査の導入は、業界にとって大きな技術的飛躍となるだけでなく、持続可能性の向上にも寄与するでしょう。大型ガラス製品の不良品や交換を未然に防ぐことで、廃棄物、輸送、再加工、そして高付加価値素材の無駄を削減できます。根本的な点として、適切に改定された規制基準は、ガラス加工会社、資材サプライヤー、設計者、開発者、そして最終顧客といった、関係するすべての当事者を適切に守ることになります。

規格が改定される前であっても、設計者、開発者、加工会社は、生産開始に先立ち、反射画像の品質、試作品の検証、およびスキャナーで記録されたデータについて、プロジェクトごとに具体的な基準を定義することができます。こうした基準がなければ、工程で最もコストがかかる部分がすでに完了してしまった設置後に、不必要なやり取りが数多く発生してしまいます。規格は依然として必要ですが、大型で高級な複層ガラスユニットに関しては、品質を評価する唯一の基準としては、もはや十分ではありません。

結論
問題は、規格自体が根本的に間違っているということではありません。規格は時代遅れであり、不十分な検査方法を規定しているため、外観性能だけでなく安全性においても不具合が生じるギャップを残しています。根本的な問題は、規格が独自の検査ロジック内では正しいものの、高級ファサードガラスはまったく異なる光学的な現実に基づいて評価されるべきであるという点にあります。標準的な小型ガラス製品であれば、標準条件下での目視検査で依然として十分であるかもしれません。しかし、高級で大型の熱処理ガラス、コーティングガラス、その他視覚的に複雑な複層ガラスや合わせガラスについては、主要な検査、合格判定方法として、目視検査は明らかに不十分になっています。

このパラドックスの2つ目の側面は、関連する品質特性を効果的に測定、記録できる自動検査システムがすでに実証されているという点です。それにもかかわらず、多くの加工会社は依然として目視検査に頼っており、最終顧客もまた、プロジェクトの現場で同じ手法を繰り返し用いています。

したがって、近い将来の方向性は極めて明確です。人間による検査は引き続き必要ですが、その役割は主に確認、再点検、そして例外的なケースへの対応に限られるでしょう。大型の高級ガラス製品における主な品質管理手法は、客観的なスキャン検査へと移行する必要があります。具体的には、表面欠点や寸法のスキャン、平坦度および歪みの測定、そして必要に応じて、強化直後の異方性の測定などが挙げられます。ガラスが建築現場に搬入される前に再現性のある品質判断を行うための現実的な方法はこれであり、建物に搬入された後では、欠点の発見にかかるコストが最大になってしまうからです。

著者について
Mika Eronen氏
は、ガラス加工のシニアエキスパートであり、世界中の板ガラス加工会社や自動車用ガラスメーカーを支援するコンサルティング会社「Global Glass Specialists」社の創設者です。
50カ国以上にわたり、強化処理、合わせガラス加工、および工程最適化の分野で25年以上の実務経験を持つ氏は、メーカーが歩留まり、生産の安定性、および製品品質を向上できるよう支援しています。Mika氏の知見は、世界中のガラス工場で行われた数千件に及ぶ監査、立ち上げ、および研修を通じて得られた生産現場に根ざしたものです。

最終的な要点:ガラス製品のサイズはますます大きくなり、構造も複雑化していますが、品質管理は依然として、工場内で3メートル離れた場所から人間の目で確認することに依存しています。

Precision Glass Industries社について:
Precision Glass Industries社は、品質、革新、顧客サービスを重視する業界をリードするガラス加工メーカーです。同社は、最先端の設備と継続的な改善への取り組みにより、最高水準の性能基準を満たす建築用ガラスおよび特殊ガラス製品を提供しています。


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オーストリア・SOFTSOLUTION社
アメリカ・LITESENTRY社

※本記事は、SOFTSOLUTION社 に特別な許諾を得て掲載しています。
※情報出展元: https://www.glassquality.com/precision-glass-industries-quality-control/ に掲載



本記事に関する問い合わせ先
株式会社TGM 営業部 設備グループ
TEL: 03-6261-1260 MAIL: general@tgm-japan.com

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