【海外情報】MG サービス社 Milo Gramondo氏の欧州ガラス業界の動向:自動化と省力化が変える工場の未来(第2部)

欧米では、板ガラス加工の自動化が、従来の加工スピードや生産効率の向上を目的とする段階から、労働力不足の補完、作業者の安全確保、トレーサビリティの強化、そして製品の複雑化・多機能化といった社会的ニーズに応えるための、工場全体の最適化へと再定義されつつあります。
本稿では、こうした欧米での動向と自動化技術の活用分野を踏まえ、今後、日本の生産現場が自動化を進めるうえで参考となるポイントをご紹介いたします。

なお、本シリーズは、以下の3部構成でお届けします。
●第1部:欧米で自動化が再定義されている背景
●第2部:2026年の技術展望と工程別の自動化
●第3部:導入の進め方・日本の特異性・2030年展望
今回は3部構成の中から「
2」をご紹介いたします。

▶2026年の技術展望
AIとデータ分析
— 現実的観点から捉えると、重要な点はAIそのものの存在ではなく、それが「予防保全」「異常検知」「画像認識に基づく品質検査」および「スケジューリング業務支援」といった、明確に定義された生産上の課題に適用されていることにあります。導入が成功するケースの多くは、まず限定的な範囲から始め、徐々に拡大していくことが挙げられます。これを説明する上で有効な表現として、「熟練者による行動の体系化」が挙げられます。一貫性のあるデータチェーン(信頼性の高いID、一貫した検査ポイント、構造化されたフィードバック)があれば、AIは判断パターンを形式化し、シフトや拠点を超えて活用できるようにすることができます。AIの導入はまだ初期段階ですが、工場プロセスのさまざまな側面を改善する強力なツールとなることが大いに期待されています。

マテリアルハンドリングとライン統合 ― 多くの工場において、実質的なボトルネックとなる原因は特定の単一の機械ではなく、プロセス間の内部搬送システムにあることがよくあります。現在、「自動化されたガラス工場」が重視されているのは、この実情を反映したものです。コンベヤ、ソーティングシステム、ロボットもその一環ではありますが、最も重要な要素は「統合」です。つまり、スマートなソフトウェアとスマートな搬送を組み合わせることで、誤った経路への搬送を削減し、下流工程での材料供給不足を防ぎ、手作業による問題を最小限に抑え、仕掛品を適切に管理する仕組みです。生産において、オペレーターが常に加工品がどこにあるか、次に何を行うべきかを判断しなければならない状況では、人的リソースの消費が増大し、品質のばらつきが生じることになります。

外観検査とトレーサビリティ — トレーサビリティは、高性能ガラスや安全関連市場において、もはや基本的な要件となりつつあります。これは自動化プロセスの導入と密接に関連しており、必須要件となっていますが、義務付けられていない場合でも、問題の発生範囲を限定することで品質不適合コストを削減します。構成要素は単純明快です(ID、マーキング、デジタル作業指示書など)が、これらによって自動ルート設定、一貫した検査工程、信頼性の高い記録が実現されます。 ディープラーニングは、実環境の変化 (異なるコーティング、パターン、プロセスなど) の下で分類の安定性を向上させるためにますます活用が進んでいます。

製品の複雑化によって求められる自動化 — 高性能製品(VIG、薄板ガラスを使用したIGU、バードフレンドリーソリューション、防火規格対応)の需要拡大に伴い、より厳格な取り扱い管理と、より安定した加工が求められています。その結果、自動化は人件費だけでなく、製品の要件によって推進されることが多くなっています。

▶自動化の効果が最も早く現れる分野:工程別
入荷、保管、およびラック・ロジスティクス — 生産が始まる前に、すでに多くの労力が費やされていることがしばしばあります。ラックの取り扱い作業を自動化し、在庫精度を向上させることで、フォークリフトや台車の往来を減らし、「検索時間」を省き、慌ただしい準備作業による破損を防止し、何より安全性を高めることができます。ここで重要なKPIはスピードではなく、不要な時間の削減とミスの排除です。

切断、ラベル貼付、および識別 — 切断は、データチェーンの起点としてますます重要視されております。段取りの最適化も重要ですが、部材の自動識別(ラベル、レーザーマーキング、シーケンス)とデータの正確な転送こそが、後工程の自動化を機能させる鍵となります。信頼性の高い識別情報がなかった場合、オートメーションによるソーティングは機能しなくなり、手作業による確認が必要となり、人手による作業が復活してしまいます。まさにこの点において、省力化は知らず知らずのうちに人為的ミスの防止へとつながっていくのです。

エッジ加工と穴あけ — 2026年は、自動運転時間の延長、設定ミス削減、および不良品の増加を未然に防ぐツールモニタリングに重点が置かれます。加工品目が多岐にわたる場合、オートメーションによるツール交換やレシピ管理は、セルフレラーニング/自動調整機能を備えたロボットやスマートマシンと同様に重要です。

洗浄と検査 ― 検査は、ソフトウェアやAI、機械学習が違いを生み出す最も代表的な領域と言えるでしょう。
現在の装置は、ビジョンシステムを用いて合格基準を標準化し、異常を検出しますが、境界線上の判断はオペレーターが行っています。近い将来には、オペレーターが検査システムを学習させ、こうした境界判断の基準をより適切に適用できるようになることが期待されています。労働力不足やコスト削減が実現されるには、不良ガラスが後工程へ流れることを防ぎ、再洗浄、再作業の繰り返しを削減する仕組みが不可欠です。

強化工程の搬送 — 強化工程に関連する労働時間の多くは、炉内での作業ではなく、仕分け、選別、および積み下ろし作業に費やされています。バッファとオートメーションによるトラッキングにより、炉への供給が効率的に行われ、経路の誤りを防ぐことができます。これは、製品の多様化が進むにつれてますます重要になっています。自動化により、各ベッドへの投入を最適化することができ、エネルギー効率と生産性を向上させると同時に、オペレーターの手作業を削減することができます。

合わせ加工 — ラインの品質は、クリーンさ、層間の処理、および安定したアセンブリに左右されます。自動化により、異物混入の発生や作業者の身体的負担を軽減でき、特に安全面や特殊用途において大きな価値があります。

IGラインの自動化 ― 複層ガラス(IGU)の製造は、繰り返し作業と搬送作業での大幅な労働削減効果を併せ持つことから、最も大きな省力化の機会がある分野として広く認識されています。自動化によって品質が安定し、品質レベルも向上します。
ソーティングシステムによるガラスの投入から、スペーサーの自動貼り付け(TPS/Flexible Spacer)、ガス充填、シール材充填、そして完成品の出荷(IGUのオートマチック ソーティング)まで、自動化が可能です。
最新の設備では、高付加価値IGUを自動で製造することもでき、これらの製品(ステップIGU、TGU、QGU、薄板ガラスを用いたTGUなど)は、本来であれば時間と熟練オペレーターを必要とするため、自動化による時間、労働削減効果は非常に大きいものです。
システム全体の観点では、IGラインの自動化は、前工程での識別(ID管理)と後工程での段取り、仕分けが適切に整備されている場合に最も効果を発揮します。これらが不十分となれば、単に作業が投入作業や仕分け作業へ移るだけになってしまうためです。

▶経済性:加工会社による導入の考え方
2026年のROI (投資収益率) に関する考察で注目される点は、直接的なコスト削減とリスク低減の両面です。作業時間の削減に加え、最も有効な導入理由として挙げられるのは、破損の減少、手直しの削減、歩留まりの向上、残業時間の削減、シフト増なしでの処理能力の向上、そして安全に関する事故の減少などです。

統合、トレーニング、および保守体制は、しばしば制約や懸念の原因となります。工場では、最先端の設備を迅速に導入することは可能ですが、統合システムを安定的に稼働させるための技術的体制を構築するには、より長い時間を要します。これは、工場内における移行プロセスと捉えるべきであり、自動化プロジェクトの不可欠な要素として、オペレーターの意識改革、予備部品の戦略策定、予防保全の日常化、および人材育成を行う必要があります。成果を最大限に引き出すためには、これらすべてを一体となって実施する必要があります。

第3部へ続く





本記事に関する問い合わせ先
株式会社TGM 営業部 設備グループ
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