
欧州委員会は、3月20日から6月12日にかけて、2030年以降のエネルギー効率化の枠組みに関するパブリック・コンサルテーションを実施しました。その目的は、2040年までに温室効果ガス排出量を90%削減するというEUの気候目標の達成に、エネルギー効率化が貢献できるようにすることです。
これに対し、Glass for Europe(以下、GfE)は、環境面でのメリットに加え、エネルギー効率の向上はEUのエネルギー安全保障と競争力を強化し、住宅の取得・維持のしやすさ(アフォーダビリティ)を高めるものであると指摘し、強固な枠組みの構築を提唱しました。こうした点を踏まえると、エネルギー効率を「システミック レジリエンス(体系的な耐性)の手段」として位置づけることが重要となります。
欧州委員会による「Accelerate EU(EUの加速)」と題されたコミュニケーション(政策文書)での最近の提言に沿い、Glass for Europeは、今後の枠組みにおいても、建築や産業など、最大の効率向上が期待できる分野に引き続き焦点を当てることを求めています。
Accelerate EU: 中東情勢の悪化などに伴う化石燃料の価格高騰や供給危機に対応し、EU市民と産業を保護するとともに、域内のクリーンエネルギー移行を加速させる目的で、欧州委員会が2026年4月に発表した戦略パッケージ
現行の法規制に基づき、GfEは、将来の枠組みに向けて以下の措置を検討することを提言しています:
▶エネルギー効率化優先(Energy Efficiency First)の原則をより具体的に運用する
▶毎年、一定割合の公共建築物を改修する義務を強化する
▶エネルギー効率化対策を支援するため、十分かつ利用しやすい資金を確保する
▶産業政策および競争力政策の不可欠な要素として、エネルギー効率化を推進する
2030年以降のエネルギー効率に関する法枠組みについての「証拠収集(Call for Evidence)」に対するGfEの寄稿
エネルギー効率の向上は、EUが2040年の気候目標を達成するための戦略において、引き続き基盤とされなければなりません。エネルギー効率の向上は、二酸化炭素排出量の削減において極めて重要な役割を果たすだけでなく、エネルギー安全保障の強化や、家庭および産業の両方にとってのエネルギーの経済的負担の抑制にも直接的に寄与するものです。
このようないくつかの観点から、これはエネルギー効率化政策にとどまらず、産業政策上の手段や社会的公平性を実現する仕組みとしての役割も果たします。これらの3つの側面は、2030年以降の枠組みにおいて取り組むべき課題と言えます。
最近のガス、電力価格の変動や急騰は、EUのエネルギーシステムの構造的な脆弱性と依存性を改めて浮き彫りにしました。したがって、供給側の介入のみに頼るのではなく、効果的かつ拡張性のある効率化策を通じてエネルギー需要を削減するという、構造的な対応を講じることが不可欠です。
欧州委員会は、高性能な窓の導入といったエネルギー効率化対策を加速させる必要性について、最近発表した「Accelerate EU Commission (*1)」において、改めて強調されました。
(*1):欧州委員会、Accelerate EU – エネルギー連合 ― 迅速な行動による手頃で安定したエネルギー、https://energy.ec.europa.eu/document/download/7fac9eea-5717-4182-a368-bd68c427ff4c_en?filename=Communication.pdf
こうした状況において、エネルギー効率は、システム全体のレジリエンスを高める手段として認識される必要があります。エネルギー需要全体を抑制することで、EUは外部からのエネルギーショックに対する脆弱性を低減し、エネルギーシステムの安定性と産業競争力を向上させ、戦略的自律性を高めることができます。こうしたより広範な視点を、将来の枠組みの設計における横断的な原則として組み込まれるべきです。
具体的には、2030年以降の枠組みの一環として、「エネルギー効率優先」の原則を維持、強化しなければなりません。加盟国に対する拘束力のある要件と明確な説明責任の仕組みを通じて、この原則が体系的に適用されるよう確保する必要があります。
エネルギー効率の向上が最も期待できる分野に焦点を当てる
将来の枠組みにおいては、現在のセクター横断的なアプローチを維持しつつ、最大の省エネ効果が期待できる分野に一層注力しなければなりません。その代表的例が「建築物」部門です。同部門は依然として最大のエネルギー消費部門の一つであり、EUのエネルギー消費量の約40%、EUのガス消費総量の約50%を占めています(*2)。
(*2):欧州委員会、EUにおけるエネルギーと建築物に関する主要事実、
https://energy.ec.europa.eu/topics/energy-efficiency/energy-performance-buildings/energy-performance-buildings-directive_en#key-facts-on-energy-and-buildings-in-the-eu
入手可能なデータによると、建築物に対する野心的な省エネルギー対策を実施することで、2030年の現行目標を10%上回る二酸化炭素排出量の削減が実現できるほか、送配電網への投資を最大442億ユーロ削減し、送配電網の過負荷を75%軽減できることを示しています(*3)。また、省エネルギー対策により、天然ガスの輸入量を年間40億立法メートル (bcm : Billion Cubic Meters : 10億立方メートル)以上削減することも可能です(*4)。これらの数値は、この取り組みがもたらす大きな可能性と対策を講じない場合に生じるコストの大きさを如実に示しています。
(*3): Akhmetov氏、Fedotova氏、およびFrysztacki氏、エネルギー効率の高い建築物によるピーク需要曲線の平坦化:ネットゼロカーボンに向けた包括的アプローチ、2025年
Akhmetov氏、Fedotova氏、Frysztacki氏: 欧州のエネルギーシステム分析を専門とする研究者
(*4): Bettgenhaeuser氏、von Manteuffel氏、そして Yordanova氏 によるEUのF・Gクラス建物の改修がエネルギー安全保障に与える影響
Bettgenhaeuser氏、von Manteuffel氏、Yordanova氏: いずれも 欧州のエネルギー政策・建物改修・エネルギー安全保障 を専門とする研究者
建物のエネルギー効率を向上させることは、冷暖房需要や、ピーク負荷管理や送配電網の安定性を含むエネルギーシステム全体に対しても、直接的かつ測定可能な影響を及ぼします。これは、将来の枠組みにおいて対策の優先順位を決定する際に重要な考慮事項となります。
高性能ガラスが果たす役割
とりわけ、高性能ガラスが果たす役割に特に注目すべきです。断熱性能の低い窓は、建物のエネルギー損失の最大30%を占めることもあり、建物全体のエネルギー性能を向上させる上で極めて重要な改善ポイントとなります。
高性能なガラスソリューション(Low-Eコーティング、日射調整ガラスなど)を導入することで、エネルギー需要を大幅に削減できるだけでなく、冬と夏の室内快適性の向上、適切な熱・採光管理による健康状態の改善、そして長期的には居住者の経済的負担の軽減など、さまざまな付加的なメリットももたらすことができます。
こうした潜在的な可能性にもかかわらず、国の改修戦略において、窓の改修は依然として十分に重視されていません。「建築物のエネルギー性能に関する指令(EPBD)」に基づき提出された「国家建物改修計画(NBRP)」では、主に断熱や暖房システムの改修に焦点を当てており、窓の改修をエネルギー性能向上の主要な推進要因ではなく、付随的な措置として扱ってまいりました。これは、高性能ガラスが持つ技術的な可能性と政策立案におけるその認識との間に依然として隔たりがあることを反映しています。この隔たりは、2030年以降の枠組みの一環として是正される可能性があります。
窓の高性能ガラスが持つ可能性を最大限に引き出すためには、2030年以降の枠組みにおいて、以下の具体的な対策を導入する必要があります:
▶「エネルギー効率優先(Energy Efficiency First)」の原則を、さらに実効性のあるものとする必要があります。この原則は、2030年以降の枠組みの一環として維持、強化されなければなりません。加盟国の投資戦略の一環として、この原則を体系的に適用し、考慮に入れることが不可欠である。
▶公共建築物について、毎年一定割合を改修する義務を強化する
公共建築物は、高性能ガラスによる外皮の改修など、抜本的な改修(deep renovation)のモデルケースとしての役割を引き続き果たし、市場全体に対して明確な基準を示す必要があります。EPBDで定められた要件に沿い、公共建築物に対する3%という目標を引き上げることも検討し得るでしょう。仮に目標を引き上げない場合であっても、これらの建築物において最も効果的な改善効果を得るための指針を、別途提示すべきです。
▶エネルギー効率化対策を支援するため、十分かつ利用しやすい資金を確保する。将来の枠組みにおいては、エネルギー効率の高い建築物向けの専用の予算項目を設けた、政策主導型の「複数年度財政枠組み」を採用することで、資金調達の機会が分散しているという課題の解決に寄与しなければならない。
▶板ガラスおよびガラス施工製造部門が、EUの脱炭素化および改修目標の達成に戦略的に重要な役割を果たしていることを認識し、エネルギー効率化を産業政策および競争力政策の不可欠な要素として推進する。
産業政策の枠組みにおいては、改修の波(renovation wave)を実現する上で、建設資材産業が果たす促進的役割を認識すべきである。
EUの掲げる温室効果ガス排出削減、エネルギー安全保障、および競争力に関する目標を達成するためには、2030年以降の強固で統合的かつ先進的エネルギー効率化の枠組みが不可欠とされております。特に建築物におけるエネルギー効率の向上は、ピーク需要、システムコスト、インフラ需要を大幅に低減させると同時に、経済的負担の軽減やレジリエンスの向上にもつながるという明確な根拠が示されています。したがって、GfEは、これらの施策を将来の枠組みの一環として検討するよう求めています。
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※本記事は、本記事は、glassonlineに特別な許諾を得て掲載しています。
※情報出展元: https://www.glassonline.com/gfe-calls-for-a-robust-energy-efficient-legal-framework-post-2030/ に掲載
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