
展示会の概要
2025年11月4日~6日、フロリダ州オーランドのOrange County Convention Centerのホールは「GlassBuild America 2025」で活気に包まれました。板ガラスおよび建材の開口部(窓、ドアなど)業界が一堂に会した今年の展示は、例年とは異なるものになることは明らかでした。
ブースはより大規模になり、機械の展示も増え、来場者の足取りは途切れることなく続き、国際的な広がりも更に広がりました。出展者からは一様に満足の声が上がり、新規顧客の獲得や商談、会場の熱気は近年にないほど強く感じられました。
今年の展示会は、明らかにGlassBuild Americaの水準を引き上げました。全米ガラス協会によると、今回のイベントには 598社以上の企業が出展し、展示面積は 232,000平方フィート(約2万1千平方メートル)以上に及びました。参加者は全米50州、ワシントンD.C.、プエルトリコ、さらにカナダ、メキシコ、その他約70か国から集まりました。
数字以上に印象的だったのは、その雰囲気です。会場全体が、まるで「未来の期待を形にする市場」のように、前向きな空気に包まれていました。
多くのサプライヤーや来場者と同様に私の意見は、2025年の展示会は、これまで北米で開催されたGlassBuild Americaの歴史の中で最高だったということです。
新しいトレンドが明らかに不足しているにもかかわらず、展示会は活気があり、興味深いものでした。
この記事の冒頭で述べた前提からすると、サプライヤー各社からいくつもの新しいトレンドや新商品が発表されると思われるかもしれませんが、実際にはほんの一部にすぎませんでした。
過去数年間は、1つ、あるいは少数の目立ったトレンドが主流だったの対し、2025年は、「目新しさ」よりも「統合」と「高度化」に焦点が当てられていたように見受けられました。自動化や持続可能性は引き続き大きなトレンドですが、会場の空気は「新たなトレンド」というより、「すでに業界の基準として定着している」というものでした。
私の見解では、業界は「何が新しいのか?」という問いから、「どれだけ速く、どれだけ効果的に展開できるのか?」へと移行しつつあると言えるでしょう。
複層ガラス – 高機能で高性能なユニット
複層ガラスは依然として大きな注目を集めており、今年の変化はわずかながらも重要なものでした。注目すべき点は単に複層ガラスを構成するガラスの枚数の増加ではなく、その製造方法にありました。
注目すべき伸展の一つは、高性能スペーサーシステム(ウォームエッジなど)と高精度な装置を組み合わせた複層ガラス製造ラインの共同開発です。複層ガラス製造会社は、トリプルガラス、大型サイズ、高耐久性といった、今日の厳しい要求に対応できる仕様を備えた機械を求め、積極的に導入し始めています。
機械分野における本展示会の主な話題は、FOREL社とQuanex社の共同開発による複層ガラス製造ラインの発表でした。このラインはQuanex社製のウォームエッジスペーサーDuraLite®およびDuraSeal®をベースとした専用設計となっています。複層ガラス製造会社において、部品を個別に購入するだけでなく、スペーサーシステムとライン設計の統合への関心が高まっていることを示しています。また、労働力不足を克服し人件費を抑えるため、複層ガラス製造を可能な限り自動化する必要性も示しています。


北米市場では、複層ガラス向けフレキシブルウォームエッジスペーサーの需要が拡大しており、Tenon社、MGM社などの中国企業やErdman社(米国)などの地元企業もこの動向に注目しています。各社ブースでは熱可塑性スペーサー(TPS)対応の複層ガラス製造ラインを展示していました。Erdman社はソーティングシステムを含むフルラインを展示した一方、上記中国企業2社はTPSアプリケーターのみの展示に留まっていました。FENZI社は、北米市場におけるTPSの需要拡大を確認していますが、複層ガラス用ウォームエッジスペーサー市場では依然としてフレキシブルウォームエッジスペーサーのSuperspacerまたはThermosealに比べ数量はまだ少ないと認識しています。
複層ガラス製造会社と販売会社にとって、上記すべては複層ガラス仕様が高度化している兆候であり、生産設備は生産量だけでなく、より高い仕様と性能にも対応する必要があると認識しています。複層ガラスに関係するあらゆるバイヤー(購入者)がサプライヤーに頻繁に投げかける質問は、単なる性能から、異なる製品の使用や将来の複層ガラストレンドへの対応における柔軟性へと移行しています。
つまり、新しい複層ガラス製造ラインの方向性は、「新しいラインは、今日の仕様に対応し、明日の可能性に備え、そして人員負担を減らすものでなければならない。」というようなものになるはずです。
ファサードのイノベーション – 機能美
GlassBuild America 2025におけるファサード展示は、ガラスとシステムがエネルギー性能、日射制御、居住者の快適性、そして美的価値をいかに実現するかに焦点をあてています。大型ガラス、高透過仕上げ、ダイナミックシェーディング、高性能コーティングが融合したファサードコンセプトは、製造工程(上流)だけでなく施工現場(下流)においても高い精度が求められます。
ガラスはもはや受動的な材料ではなく、建物の性能を左右する能動的な材料となっています。加工会社や機械メーカーも、より広範なファサードエコシステムの一部と位置付けられています。
市場状況 – ガラス業界の回復力が不確実性の中での生き残りを支える
世界情勢、米国での輸入関税、国内市場の需要とインフレは、近年すでに多少のストレスにさらされていた米国市場にとって新たな課題となっています。欧州製の設備への輸入関税増、高率なアルミニウムへの関税(50%超)、厳格な移民政策による労働力不足、不確実性といった要因は、米国市場が直面する主要な課題のほんの一部に過ぎません。
こうしたマイナス面もありますが、GlassBuild America 2025にはプラスの側面もありました。業界が団結し、新たな可能性を探りながら幅広い協力を開始していることです。これは長期的には、米国ガラス業界の発展にとって大きなメリットとなるでしょう。
最後に ― 業界は性能を中心に専門化が進む
GlassBuild America 2025は、単なる 米国の展示会とは一線を画すものでした。これは、板ガラスとガラス工事業が、性能、精度、そして耐久性がオプションではなく、当然の要件となっている、より成熟した段階に入ったことを示すものでした。
「ニューノーマル」は再び変化しました。より優れ、より適切なプロセス、より優れた材料と生産方法を、より多く行うことが求められています。
率直に言って、今年のGlassBuild America 2025にはあまり期待しておらず、魅力の薄い展示会になるだろうと予想していました。しかし、それは間違いでした。
世界情勢や米国のさまざまな分野における新たな政策は、他の多くの業界と同様に、市場とガラス業界にも確実に影響を与えています。しかし、ガラス業界が良好な対応をしめし、他の業界よりもはるかに回復力があることを示していることを嬉しく思います。市場は現時点ではそれほど好調ではありません。このような取り組みと回復力は、状況が改善した際の復興を後押しする可能性が高く、これは成熟した業界の兆候だと私は考えています。
参考元/出典:
- glassbuildamerica.com
- glassonline.com
- forelspa.com
- quanex.com
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