【海外情報】持続可能な未来への歩み:欧州板ガラス業界の環境優位性への道(前編)

板ガラス業界は持続可能性への取り組みにおいて変革期を迎えており、欧州のメーカーは環境管理を積極的に推進しています。世界的な気候変動と環境保護が注目される中、業界が具体的な行動と測定可能な結果を通じて示す対応は、国際市場に重要な洞察を提供しています。

製造イノベーション: 脱炭素のための核心
ガラス製造における炭素排出は、ガラス業界にとって最大の環境問題のひとつです。最近の業界データによると、複層ガラスユニットの炭素排出量の約78%がガラス製造工程に起因していることが示されております。この現実が、複層ガラスユニット製造に携わる主要メーカーの積極的な対応に弾みをつけています。

NSGグループ:
NSGグループは、低炭素ガラス製造の分野において画期的なPilkington社 Mirai製品によって大きな進歩を遂げました。NSGグループは、2030年までに排出量を30%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという高い目標を掲げています。
注目すべき成功事例は、NSG Pilkington社の英国事業は、温室解体プロジェクトで220トン以上のガラスを回収することで完全な循環型社会であることを実証したことです。この取り組みだけで55トンのCO2を削減し、リサイクルプログラムの現実的な可能性を示しています。

サンゴバン社:
フランスを拠点とするこの同社は、炭素削減への包括的なアプローチを実施し、以下のようないくつかの取り組みを行なっています:
 ◆2021年から4,000トンの炭素排出量削減
 ◆フロート工程における酸素使用量の強化
 ◆高度な廃熱回収システム
 ◆炉設計の最適化
 ◆再生可能エネルギーの採用

AGC グラス ヨーロッパ:
世界のリードする同社は、水の節約を持続可能性の重要な要素であると認識しています。ベルギーのMoustierにあるAGCグラス ヨーロッパの工場は、低炭素Planibel Clearlite製造(循環型の持続可能なガラス製法)のパイオニアであり、4mmの透明ガラスで5.5kg-CO2 eq/m²という驚くべきCO2排出量削減を達成しました。
この成果は次の要因によるものです:
◆スマートな水リサイクルシステム
◆プロセスの最適化
◆持続可能な原材料調達
◆循環型経済への取り組み
◆Volta Projectのような先進的な電気昇圧技術

Volta projectは、AGC社 と サンゴバン社の共同プロジェクトで、European Innovation Foundの支援を受け、Barevka(チェコ共和国)にある工場の改修を開始しました。業界標準はほぼ 100% 天然ガスのところ、完成後の生産ラインは、50%が電化され、50%が酸素とガスの組み合わせで加熱されます。リサイクル率が高いため、材料の消費量も大幅に削減されます。現在の板ガラス炉で使用されている技術と比較すると、これらの2つの技術は画期的なブレークスルーと言えます。
ハイブリッド炉の導入により、炉のエネルギー関連排出量は75%削減され、操業開始から10年間でCO2換算193,000トン以上の削減が見込まれています。工場全体にもグリーン電力が供給されています。

ガーディアン社:
業界の循環性への取り組みは、革新的なリサイクルプログラムや廃棄物削減戦略によって実証されています。
ガーディアン社の最近の開発には以下が挙げられます:
◆Nexa 低炭素ガラスの導入
◆地球温暖化係数(GWP)を2019年比で23%削減
◆カレット処理能力の強化

EPD(環境製品宣言): 活動における透明性
EPDは、板ガラス業界における自主的な環境配慮の取り組みから、重要なビジネス要件へと発展してきました。最近の業界レポートによると、EPDは規制要件と市場要求の両側面に後押しされ、義務化されつつあります。
建築用製品の環境「成分表示」と表現されることもあるEPDは、業界の環境影響と持続可能性への取り組みを伝える方法に変革をもたらしつつあります。

EPDの重要性が高まっている背景には、規制上の要件と市場の要求の両側面があります。世界的な建設プロジェクトでは、材料選定のための詳細な環境影響データが一層求められるようになっており、そのため、各社独自のEPDを取得した材料で構成された製品は競争上優位に立つことができるようになっています。

メーカー、特に国際市場で事業を展開するメーカーにとって、EPDは環境パフォーマンスを伝えるための標準化されたアプローチを提供します。この標準化は、LEEDや International Green Construction Codeを含む様々な認証要件を満たすと同時に、ますます厳しくなる各自治体の建設プロジェクト要件を満たすためにも極めて重要なものです。

EPDの導入により、市場でのポジショニングの強化、ステークホルダーとのコミュニケーションの改善、環境への影響に対する一層の理解など、企業にとって具体的なメリットをもたらしてきました。この透明性は、詳細な環境情報が材料選択の前提条件となることが多い、持続可能な建築プロジェクトにおいて特に価値あるものとなっています。

One & Two Manhattan West – New York –
FENZI社とALUPRO社製品で製造された複層ガラスユニットを使用した

プロジェクト例:両社とも「EPD認証シール」を取得しています。

これらの宣言によって提供される透明性は、環境目標を支援するだけでなく、国際的な取引や協力を促進し、ガラス業界における持続可能性の共通基準を創出します。

業界が進化を続ける中、EPDは単なるコンプライアンス要件に留まらず、環境影響の評価、報告、改善方法における根本的な変化を具体化するものであり、ガラス製造におけるより持続可能な未来への道を開くものです。


※資料と引用文献
※情報出展元:The National Glass Association (https://www.glass.org/)
http://www.glassmagazine.com
La Rivista Del Vetro (https://www.letsglass.it/)
https://glassforeurope.com/
https://www.agc-glass.eu/en
https://www.fenzigroup.com/
http://www.alupro.it/
https://deltamax.eu/
https://filtraglass.com/en/
https://www.glassquality.com/ に掲載


イタリア・MG Service社



本記事に関する問い合わせ先
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