
既報の通り、株式会社TGMの欧州現地機関であるMG SERVICES社のMilo Gramondo氏が4月に来日しました。普段はイタリア現地で営業面、技術面の両面で迅速にサポートする同氏は、同時にガラス業界の情報を収集しております。
株式会社TGMでは、Gramondo氏に欧州やイタリアでのトレンドであるエコ/リサイクルに関してインタビューを実施しましたので、同氏の解説を以下にまとめます。
他の先進国同様、欧州やイタリアではリサイクルの話題は今日非常に重要になっています。ガラス業界においては、板ガラスに比べて瓶ガラスのリサイクル工程がはるかに進んでいることは明らかです。欧州では、瓶ガラスのリサイクル率は80%に近づきつつあります。(ちなみに日本は世界トップクラスで約90%です。)
板ガラス業界では、正確なリサイクル率の情報はありません。なぜなら、その性質上、製品のリサイクルが非常に困難で、且つ廃棄となるまでの製品寿命が非常に長いことがあげられます。リサイクルは難しく、その目標は、リサイクル工程を改善し、生産における革新的なソリューションによって、カーボンフットプリント(CO2排出量)を削減することにあります。2023年は板ガラス業界のCO2排出量は12%削減されたと計算されていますが、この傾向は、持続可能な活動というよりかはむしろ生産量の減少によるところが大きいと言えるでしょう。
欧州の目標設定は変わらず、2050年のカーボンニュートラル達成のために、2030年までにはCO2排出量を大幅に削減する必要があります。
私の見解では、効果的な改善策は、より少ないエネルギーかもしくは全く異なるエネルギーで板ガラス製品を生産する革新的な方法を模索するのではなく、より効率的に板ガラス製品をリサイクルする方針へとアプローチを変え、明確な手順を確立することだと考えます。
- 循環型経済への取り組みとしては、カレット(リサイクルガラス)のリサイクルを重視しています。これを実践すると、原材料は節約され、エネルギー消費は抑えられ、CO2排出量が削減されます。
- 建物の解体や改築の際に「クローズドループ型」のリサイクルを達成するには未だ課題があります。リサイクルセンターでの汚染リスク、材料の不十分な分別、そして古い建造物からの不良カレットが進行を妨げています。
- 解決策としては、材料の慎重な選別、材料の価値に対する意識の向上、リサイクル活動との連携などが挙げられます。
これらに対処するため、メーカーは革新的なアプローチを模索しています。
- 「ガラスをサービスとして提供」: 計画的、定期的な建て替えを奨励することで、再利用やリサイクルのためのガラスの安定的な回収を確保する。
- 既存の建物のガラスを新たな用途に使用するためのガイドラインを確立し、持続可能性を促進する。
- 複層ガラスの自動分離技術を確立する。
要約すると、板ガラス業界の持続可能性への取り組みには、カレットのリサイクル、複層ガラスの課題への対応、革新的技術の採用などが必要になります。欧州のガラス展示会Glasstec 2024が近づくにつれ、循環型経済は引き続き重要なテーマとなっています。これは板ガラス業界が「クローズドループ型」のリサイクルのための持続可能な手法を模索し、実施する機会を提供するものであり、より環境にやさしく、資源効率の高い産業を目指していることになります。
ガラス産業のエネルギー削減とCO2排出削減の可能性

エネルギー削減の大きな可能性
2030年に欧州のすべての建物に高性能ガラス窓を採用した場合、年間7,550万トンの石油が節約される計算となり、これは建物のエネルギー消費量の29%削減に相当します。これは、EUの2030年エネルギー効率目標の最大42%が、高性能ガラスによる窓を採用することで達成できることを意味しています。
この削減の50%近く、年間3,630万トンの節約は、窓の交換率を2倍にすることと、エネルギー効率の高いガラスを採用することで、約10年で実現できます。
(出典:Glass for Europe; Potential impact of high-performance glazing on energy and CO2 savings in Europe)
板ガラス業界はどの先進国でもほぼ同じような課題やニーズを抱えているので、日本市場も同じ傾向になると考えられます。これは世界的にもほぼ同じですが、産業の発展を促進させたり鈍化させたりする各国の規制には違いがあります。
参考文献
1. Glass for Europe; Recycling of end-of-life building glass
2. Glass for Europe; Reuse, remanufacturing, recycling: the case of glass for buildings
3. Glass for Europe; FLAT GLASS IN CLIMATE-NEUTRAL EUROPE
本記事に関する問い合わせ先
株式会社TGM 営業部 資材グループ
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