
「Glass Technology International」の今回の特集では、Grand View Research社(本社:米国カリフォルニア州サンフランシスコ)が発行した市場分析レポートに基づき、2030年までの世界の建築用板ガラス市場の現状規模、動向、成長予測を検証します。
本稿では、需要を牽引する製品タイプ、用途、地域別動向、規制要因を分析するとともに、進化する建設業界の動向や持続可能な建材の活用急拡大に関する重要な見解を紹介します。
市場規模と動向
2023年の世界の建築用板ガラス市場は、約2194億1000万米ドル(約34兆円)に達し、2024年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)3.8%で成長すると予測されています。この上昇傾向は、特に建設、建築およびインフラ投資を通じた新たな経済成長戦略によって牽引されています。
さらに、ガラスの環境に優しい特性は、特に商業施設開発においてガラスの採用拡大に貢献しています。
建築用板ガラスは、ファサード、ドア、窓、手すり、パーティション、パティオカバー、サンルームなど、幅広い用途に利用されています。特に商業ビルの外装では、リサイクルの可能性や外観の美しさに優れた利点があるため、その使用が顕著です。例えば、ニューヨークのマンハッタン・ウエスト開発プロジェクトのTower Twoは2024年1月に完成し、両タワーに高性能ガラスが採用され、洗練されたクリーンなデザインが際立っています。
CAGR(Compound Annual Growth Rateの略:年平均成長率):ある一定期間における成長率を「毎年一定の割合で成長した」と仮定して算出する指標です。投資や売上の長期的な伸びを把握する際に使われます。
米国は依然として建築用板ガラスの最大消費国の一つであり、ファサード、パーティション、パティオなど、住宅、商業プロジェクトでこの素材を積極的に活用しています。今後数年間にわたり建設支出の増加が見込まれることから、国内における製品需要はさらに拡大する見通しです。数値的には、2023年の建設支出は約1兆9787億米ドル(約306兆6,529億円)と報告されており、前年の1兆8487億米ドル(286兆4,717億円)から7.0%の増加を示しています。2023年12月単月では、住宅建設が9,117億米ドル(約141兆2,647億円)を占め、11月の改定値8,988億米ドル(約139兆2,659億円)から1.4%増加しました。民間建設業界の2023年総額は1兆5,410億米ドル(約246兆3,360億円)で、2022年の1兆4,724億米ドル(約236兆8,000億円)から4.7%増加しました。高層住宅、オフィスビルの増加も今後数年間で市場成長に大きく貢献すると予測されています。例えば2024年1月、建築事務所AO社とMatteson Capital社はオクラホマシティ中心部におけるBoardwalk at Bricktownプロジェクト計画を発表しました。承認されれば、計画中の高さ1,907フィート(約582メートル)のタワーは世界で6番目に高い超高層ビルとなり、同市中心部の主要なランドマークとなるでしょう。


市場集中と特徴
建築用板ガラス業界は現在、市場の勢いが加速しているものの、緩やかな成長期にあります。ライフスタイルの多様化や生活水準の向上を背景に、住宅建設、商業建設の両分野でフロートガラスや強化ガラス、その他のガラスに対する需要が拡大しています。市場環境は細分化され、多くの企業が参入して競争が続いています。特に新興企業の多くは、競争力を高めるため、戦略的提携や共同事業を積極的に展開しています。こうした取り組みにより、各社は資源や知識を結集し、共通の目標を追求することで、変化が激しく多様化した市場環境の中でも成長基盤を強化しています。
これらの協力戦略は、激化する競争の中で、市場プレゼンスを維持または拡大していくことを目的としています。
製造(ものづくり)
建築用板ガラスの製造は、製造工程に影響を及ぼす可能性のある様々な規制によって管理されています。
米国労働安全衛生局(OSHA)などの機関は、ガラス製造に関連する具体的な安全基準を制定しています。さらに、国および地域の建築基準法には、安全基準への適合のために、ガラスの厚さ、強度、用途に関する詳細な要件が規定されていることが多くあります。建築用板ガラスは、耐久性や透明性、環境への配慮など、独自の特性を備えているため、直接的に代替するのは難しい素材ですが、場合によっては他の材料が利用されることもあります。ポリカーボネート板、アクリル板、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)フィルムなどの製品は、建築用板ガラスと同様の性能特性とコストメリットを提供します。しかし、これらの代替材料は、建築用板ガラスほどのデザイン性や長期的な性能を発揮するには至らない場合が多くあります。
製品に関する見解
2023年には、複層ガラスは売上高ベースで最大の市場シェアを占め、総売上の38.22%を占めました。熱伝導を低減することでエネルギー効率を高める能力が、最新の建築物で支持される主な理由であり、冷暖房のエネルギー消費削減に大きな効果を発揮します。省エネ建築手法を重視する規制の取り組みは、今後数年間で複層ガラスの需要をさらに押し上げると予想されます。一方、強化ガラス分野は、今後数年間で年平均成長率(CAGR)3.8%の成長が予測されています。同厚の通常ガラスに比べ約2.5倍の強度を持ち、地震、サーマルロード(熱負荷)、強風など環境負荷、機械的負荷がかかる用途に最適です。安全性と性能の両面から建設用ガラスとして頻繁に採用されています。

用途別の見解
用途別では、2023年に住宅部門が売上高シェア54.81%で市場を牽引しました。住宅建設において建築用ガラスは、窓、バルコニー、サンルーム、ドア、パーティションなど、幅広い用途に利用されています。その外観の美しさと耐久性、持続可能性の配慮から、住宅の外装用途に広く採用されています。住宅建設とリフォームの継続的な成長は、今後数年間の需要を支えると予測されます。
一方、非住宅分野は最も高いCAGRで拡大すると予測されています。建築用ガラスはモダンな商業デザインに欠かせない要素であり、独自性のあるカスタムメイドの構造を可能にします。外観の柔軟性に加え、商業プロジェクトにおける省エネガラスの採用は、二酸化炭素排出量の削減に貢献し、建物全体の持続可能性に貢献します。

地域別の見解
北米は2023年に世界市場シェアの16.32%以上を占め、住宅用、商業用不動産への堅調な投資が建築用ガラス製品の需要を牽引し続けています。
米国市場は、昨年、北米全体の収益の約30.0%を占めました。この実績は、住宅用、非住宅用建築プロジェクト全般、特に最先端で効率的なガラスソリューションを求めるプロジェクトにおいて、強い需要があることを示しています。


欧州
欧州における建築用板ガラス市場は、2023年に売上高シェア12.88%を占めました。
この成長の大部分は、エネルギー効率の高いインフラ整備に向けた地域的な取り組みによるものです。
ドイツは欧州市場を牽引し、地域全体のシェアの約15.0%を占めました。同国が持続可能で環境に配慮した建築設計に注力したことが需要を大幅に押し上げました。英国では、欧州諸国の中で最も早い速度での成長が予測されています。国内の住宅不足解消を目的とした政府の手頃な価格の住宅提供の政府投資が、今後数年間のガラス使用量増加の強力な推進力となる見込みです。
中国とアジア太平洋地域
アジア太平洋地域は2023年に最大の市場シェアを占め、世界全体の売上高の58.71%を占めました。急速な都市開発、人口増加、経済活動の拡大により、建築用板ガラスなどの近代的な建材を必要とする大規模な建設プロジェクトが活発化しています。
中国はアジア太平洋市場を牽引し、同地域全体の約60.96%を占めました。高層商業施設ビルやオフィスビル開発への投資増加は、国内における建築用ガラスの需要を押し上げ続けています。一方、インドはアジア太平洋地域で最も成長が著しい市場として認識されています。政府の「スマートシティ構想」やその他のインフラ開発政策が、教育、政府施設、観光などの分野を中心にガラスを含む高品質な建設資材の需要を押し上げています。
中南米における建築用板ガラス市場は、2023年に世界シェアの4.77%を占めました。この地域の成長は、主に建設分野の継続的な拡大に起因しています。ブラジル単独で、インフラの整備やサービス業、観光部門への投資により、この地域の市場の約40.0% を占めました。

中東とアフリカ
中東、アフリカ市場は、2023年に世界の売上高の7.32%以上を占めました。新たなる工業団地、ビジネスセンター、公共インフラプロジェクトへの投資が、地域の需要を押し上げています。サウジアラビアが牽引役となり、この地域の市場の約22.0%を占めました。
同国の大規模な開発プロジェクト ― Neom、Red Sea Project、Qiddiyaなど ― が建築用板ガラスへの強い需要を支える主要な要因となっています。
Neom(ネオム):サウジアラビア北西部で建設中の巨大な未来都市プロジェクトです。石油依存からの脱却を目指す国家戦略「サウジ・ビジョン2030」の中核事業で、スマートシティ技術や再生可能エネルギーを全面的に導入する計画が進められています。
Red Sea Project(レッドシー・プロジェクト):サウジアラビア西海岸の紅海沿岸で進められている大規模な高級リゾート開発計画で、国家戦略「サウジ・ビジョン2030」の重点プロジェクトのひとつです。
Qiddiya(キディヤ):サウジアラビアの首都リヤド近郊で建設が進められている巨大なエンターテインメント都市開発プロジェクトで、「サウジ・ビジョン2030」の中核事業のひとつです。
※本記事は、glassonline社に特別な許諾を得て掲載しています。
※情報出展元:Glass-Technology Internationalに掲載
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